ウォームアップでのストレッチについて

2016-05-10

スポーツでのトレーニングやコンディショニングの方法論では、10~20年前まではOKだったものが現在ではNOに、あるいは逆に昔はNOだったものがOKに…という事例が多々あります。分かりやすいところで言うと、昔は「スポーツ中はバテるから水は飲むな」と言われていたものが今では当たり前のように積極的な水分補給が奨励されたり、或いはやはり昔は普通に行われていた「うさぎ跳び」が現在では殆ど行われないトレーニングになっていたり…などです。単なる根性論だったり迷信のようにあまり深い根拠なく行われていたものが徐々に見直され、良いものは良くてダメなものはダメ、とより明確になった結果なのですね。しかしこうした様々な方法論の見直しの中では、相対する見方が混在してハッキリした結論が出ないものも中には存在しています。

近年、「ウォームアップで行なうストレッチは、実は不要なのではないか?」という見方が出ています。ストレッチと言っても全てがダメなのではなく、ここで槍玉に上がっているのはゆっくりと深呼吸をしながら反動をつけずに筋肉を伸ばしてゆく方法のいわゆる ≪静的ストレッチ(スタティック・ストレッチ)≫ です。「静的ストレッチでは体は温まらず、ケガの予防にもならない。運動中のパフォーマンスもかえって落ちてしまう。」…というのがその新説の柱です。実際にサッカーの世界組織であるFIFAでは現在、ダイナミックに体を動かしてゆく「The 11+」というウォームアップの方法を公式に推奨しており、この中でも確かに静的ストレッチは全く内容に含まれていません。この「The 11+」を実践した選手達は、実践してない選手達と比較してケガの発生率がグンと下がっているという研究データも出ているのだそうです(「The 11+」は日本サッカー協会《JFA》のHPで動画を見ることも出来ます⇒こちら)。

こうした新しい方法論や検証結果は傾聴すべき点が多々あり、とても興味深いものがあります。そもそも何故ウォームアップが必要なのかという原点に立ち返れば、それはやはり「運動に適した体にするために筋肉を動かして筋温を上げる」ということに他なりません。そのため競技に見合った形で事前に体をよく動かしておき、筋肉をくり返し収縮させて使いやすい状態にしておく必要があるのです。仮に真冬の時期に外の寒いフィールドでスポーツをするような場合、せっかく体を温めようとしてもノンビリとストレッチだけをしていれば、体はあまり温まらないどころかかえって冷えてしまいますね。そして運動開始前に緊張感が抜けてリラックスし過ぎてしまうこともその後の体の動かし方にマイナスの影響を与えてしまうため、やはりある程度注意しなければなりません。よってこの「ウォームアップでは出来るだけ動的な要素を取り入れた方が良い」は一般論として理に適っているものであると思いますし、総論では私も概ね賛成です。

しかし一方で、ウォームアップで行う静的ストレッチは本当に【全てダメ】なのでしょうか?ストレッチ不要論を実践している方々の中には「運動前ストレッチは有害」とまで言い切る人もいます。私はこうして新しい方法論が生まれたり時代と共に変化したりすることには柔軟に考えてゆきたいと思いますが、「極論」になってしまうことにはいささか疑問符を持ってしまいます。世の中には老若男女いろんな世代の人たちがそれぞれの趣向でそれぞれのスポーツを楽しんでいます。スポーツによって求められる柔軟性の範囲も変わってきます。その分、こうしたコンディショニングの方法論も100か0かの話ではなく人やケースによって様々なはずですからね。

そして【ウォームアップで静的ストレッチをする方が良い方々】は、昔も今も未来も確実にいると考えます。それは、

・その競技に明らかに適さないほど筋肉が硬く、使う関節の可動範囲も狭い人
故障明けでスポーツを徐々に再開してゆく人

です。

静的ストレッチの目的は筋肉の柔軟性を高めて関節の可動範囲を広げる事です。まずそれぞれの競技に見合った体の土台を造るため、筋肉や関節動作の自由度が狭い人はそれを適度に広げてゆく作業が必要となります。これは故障の予防としても必須作業です。また肉離れや筋挫傷、捻挫、或いはその他のスポーツ障害の痛みでブランクが出来てしまい、期間を置いて復帰することは長くスポーツを続けていればよくあることです。そうした復帰時期に行うウォームアップの一環としても、まず優しく体に刺激を与えてゆく静的ストレッチはやはり外せないものだと思うのです。

「11+」のように最初からアクティブに体を動かしてゆく方法は、一般的な選手にとっては効率よく体を温めてケガの発生率も低くしてくれる有益な方法となるでしょうが、全ての選手にそれが当てはまるものではないと思います。前述したように体が硬すぎる人や既にケガをしてしまった人などは練習前に十分に時間を取り、最初に静的ストレッチをして緩やかに体に刺激を与えるところから始め、徐々に「11+」のような動的要素を取り入れてゆけば良いと考えます(どの程度静的ストレッチを行うかはケースバイケースで、現場での判断となるのではないでしょうか)。「今までずっとそうやってきたから…」と漫然と同じ方法だけを続けるのではなく、自分の体の状態を把握し、行なう競技や環境に適した方法を常に考えて実践してゆくことが大切かと思います。

長々と書きましたが、ストレッチに関しては上記の様な見解に沿って治療の中でもアドバイスさせて頂いています。

院長:本多

 

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