VOL.4 肩関節周辺のスポーツ外傷・障害

肩にまつわる主なスポーツ外傷・障害をご紹介します。

肩は上腕骨、肩甲骨、鎖骨の3つの骨と、それらを取り巻く軟骨、筋肉、靱帯、腱板などの軟部組織で構成される複合体の関節です。様々な動きが可能になる分、無理がかかり痛みを生じることも多く、特に物を投げる動作のあるスポーツ種目で故障が発生しやすいのが特徴です。

● 肩関節脱臼
● 肩鎖関節脱臼
● 鎖骨骨折
● インピンジメント症候群
● 上腕二頭筋腱損傷
● 水泳肩
● リトルリーグショルダー
● ルーズショルダー(動揺性肩関節)

肩関節脱臼

上腕骨と肩甲骨が連結する肩関節は、上腕骨の骨頭(関節内の凸の部分)に比べて肩甲骨側の凹の部分が小さく、浅く作られているため、それを補う形で関節唇という軟骨と周辺の筋肉、腱板が関節を覆っています。こうした構造は関節が伸びる方向や力の強さによっては大変不安定な状況にもなりやすく、他の関節に比べて脱臼する確率も高くなります。

その肩関節脱臼でも上腕骨頭が体の前方へ滑り出してしまう前方脱臼が90%以上を占めています。これは腕を外側から後ろの方へ強く引っ張られる力が強制された際や転んで手をついた時に肩が過剰に伸ばされた際などに起こりやすくなります。

スポーツの現場で発生した場合は、ただちにアイシングと最低限の固定(三角巾かそれに代わるもの)をし、医療機関に受診しましょう。整復後は包帯、三角巾などによる固定を施し、安静状態のまま約3~4週間過ごしていきます。その後、徐々に理学療法を行いながら動かしていき、可動域を戻していきます。

肩の脱臼は一度脱臼すると“クセ”になりやすく、ちょっとした動作で外れてしまうこともあります。そのため治療が終了した後でも再発予防として肩周辺の筋力(特にインナーマッスル)を 強化していく必要があります。
 

肩鎖関節脱臼

肩鎖関節とは肩甲骨と鎖骨が連結する関節で、肩鎖靱帯により骨同士が繋がれています。スポーツにおける受傷では転倒して肩を直接強打した際や、同じく転倒時に手や肘をついて衝撃が肩に加わった際などに起こりやすくなります。

損傷の程度は靱帯の部分断列(捻挫程度)から完全断列による脱臼まで段階があり、重度になるほど変形や腫れ、痛み、運動制限が著しくなります。軽度の損傷では逆に気づかずに放置してしまうことも多いため、後になって痛みが引きづらくなることもあり、注意が必要です。

受傷後は早急に医療機関へ受診し、整復や固定処置を施してもらいましょう。固定はテーピングで行う場合や、パッドとの組み合わせで行うものもあり様々です。その後のスポーツ復帰時においても患部の保護となるこうした固定は必要になりますが、損傷部の修復が最優先となります。
 

鎖骨骨折

骨折の中でも発生頻度の多い部位です。その多くは直接ぶつけるのではなく、介達外力といって転倒して肩を衝いた際に衝撃が肩に加わり折れていくものです。

幼児の場合はヒビが入る程度(不全骨折)が普通で、変形したまま治っても旺盛な修復力で自家矯正され、やがて正常な状態に戻っていきます。少年期以降の場合は折れた際に周辺の筋力の作用により高度に骨が転位することが多く、整復作業が必要となります。保存療法における固定は8字帯と呼ばれる装具などで行われますが、ギプスなどと比べて不安定であることから、日常生活での極力の安静が必要になります。

骨の治癒後は長期の固定で肩の可動域が制限されたり筋力が低下することもあるので、機能回復のためのリハビリテーションを十分に行います。
 

インピンジメント症候群

インピンジメントとは“衝突”の意味で、この場合は肩関節内で内側に入り込んでいるインナーマッスルと呼ばれる筋肉群の付け根の腱板部や滑液包が、繰り返しの動作によって周りの骨の突起や靱帯部と摩擦を起こし、炎症が発生する現象を指します。さらに炎症のために靱帯や腱板が分厚くなり、余計に摩擦を強くする・・という悪循環に陥ってきます。野球、テニス、バレーボール、水泳及びその他の様々なスポーツによって起こりうる症状です。

痛みは主に運動時に生じ、肩を使うほど悪くなります。手を肩の高さに挙げるスポーツをするとき、物を持ち上げるとき等で特に強い痛みを訴える事が多いようです。悪化しすぎると腱板断裂(後述)を伴うこともあり、症状が進行する前に何らかの手を打っておくことが大切です。

炎症が強い場合、或いは使いすぎで痛みが発生した場合は、まず安静とアイシングで様子をみます。この際の安静とは、痛い方の腕を水平以上で使用しないことです。但し、この状態が長期に亘る場合は肩の拘縮予防のために適度にストレッチを加えていきます。急性期が過ぎた頃より温熱、マッサージ等の理学療法を開始し、最終的な段階として筋力トレーニングを行い、機能を回復していきます。この際の筋トレは、腕を可動させずに行う方法(等尺運動)が望ましいでしょう。
 

上腕二頭筋腱損傷

上腕二頭筋とは‘力こぶ’を作る二の腕の筋肉で、肩から始まった2つの筋肉が途中で1つの筋になっていき、肘の先の前腕部の骨に付着します。この2つに別れた部分の長い筋の方(長頭)は、肩の付け根のところで上腕の骨にある溝の中を通ります。溝の上には靱帯が橋渡しのように着いてトンネルのような形を作っています。肩を上げる動作を繰り返す場合、このトンネル内をスジが上下し摩擦を起こします。この摩擦が長時間続くとその部分に炎症が起きてきます。

肩を上げていくと途中のある一定の角度で強く痛み、高く上げると痛みが収まるといった症状が現れます。肩の前側の圧痛も強く、進行すると徐々に肩を動かせる範囲が狭くなってきます。これはトンネルの中で炎症を起こした腱や靱帯が肥厚し、癒着を起こしていくためです。

初期にはアイシングと安静を、痛みが落ち着いてからは温めて周辺をマッサージやストレッチでほぐしていきます。スポーツにおいては、痛みのある期間中はなるべく痛みの出る方向への繰り返しの使用を制限していきます。
 

水泳肩

これもインピンジメント症状のひとつです。

泳ぐ力の80%は腕の運動から生じています。水泳練習での肩の反復運動において、上腕骨の骨頭が肩甲骨の一部分や靱帯と衝突を繰り返していると、刺激を受けた部分が 炎症を起こしていきます。

水泳における肩の痛みの発生率は高く、呼吸側の肩の痛みが若干多いようです。短距離選手や中距離選手は1回1回のストロークが強すぎるので痛みを発生しやすい傾向にあります。年代的には最も練習量の多くなるであろう、中学・高校生に多発します。

まずは練習に耐えうるだけの筋力や柔軟性が十分に備わっていることが大切です。そのための筋トレ、ストレッチはしっかりと行いましょう。炎症による痛みが強い場合は練習を中止し、治療に専念します。初期にはアイシングをしテーピング等による保護を行い、症状が落ちついたら温熱やマッサージ、ストレッチを施していきます。
 

リトルリーグショルダー

成長期(11、12歳前後)の少年野球選手に発生することのある肩の痛みで、上腕骨の肩側の骨端線(成長軟骨)が離開してしまう症状です。投球に伴う肩の痛みが特徴で、症状が進行すると投球後も痛みが長時間持続します。ピッチャーだけでなく、野手にも発生することがあります。投げ方により、骨端線部に“ねじれの力”と“引っ張りの力”が繰り返されるのが原因とされています。

発症した場合は投球練習は禁止するか、大幅に制限していきます。治療は他の症状と同様に痛みの状態に見合った理学療法を施し、経過を観察していきます。治癒後の投球再開時にはフォームをチェックし、正しい投げ方に改善していきます。
 

ルーズショルダー(動揺性肩関節)

他のスポーツ障害とは異なり、体質的な要因の大きい症状です。肩関節周辺の神経・筋肉及び骨の異常はないが、関節に多方向の不安定性があり、異常にゆるくなってしまう状態です。左右共、同じ様なゆるさを持ってしまうことが多いのが特徴です。

この症状がきっかけで、若いのに年齢と不釣り合いな肩こりや肩関節周囲の重だるさを持つことがあります。また、スポーツ中にちょっとした動作で肩に痛みが走ったり、捻挫などを起こすこともあります。

このような症状に対しては、それに伴う痛みへの治療はもちろんですが、肩関節周囲の筋肉(特にインナーマッスルと呼ばれる棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)の強化訓練が必要になってきます。これは長期に亘り、根気強く続けていかなければなりません。肩関節の脱臼や亜脱臼が習慣性になってしまったものも同様です。

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