高齢社会とロコモティブ・シンドローム

ご高齢の患者さんと治療しながら会話をしていると、 「いつか自分が何も出来なくなって、人のお世話になるのは嫌だわ。」 というお話をよく伺います。確かにそうです。いつまでも若い頃と同じように健康で、丈夫な身体を維持してゆきたいと思うのはどんな方でも同じ思いのはずですね。しかし今の日本は 「高齢化社会」 を通り越して完全な 「超高齢社会」。 4人に1人は高齢者という現実の中で、要介護の需要もうなぎのぼりに高まっています。そうしたご高齢の方々のいわゆる 「健康寿命」 を引き上げ、体力年齢を引き下げてゆくために何をすべきか、社会全体でもっと考えてゆく必要があります。

最近では 「ロコモティブ・シンドローム」 といった言葉も叫ばれています。
これは体の運動器(関節機能、骨格、筋肉など)の衰えが原因で介護や介助が必要となったり、そうしたリスクが高まる状態を指すものです。脳卒中や認知症と比べると一般にはまだ深刻に受け止められていない状況ですが、健康な体の基礎は、一にも二にも足腰の強さからといっても過言ではありません。何がしかの原因があって痛みや不調があれば、治療その他で出来るだけ早く痛みが取れるように努力し、その上で体力・筋力の向上のために、その人の出来うる範囲の運動等によって先々の衰えに対する予防を行なうことが大切です。

これは高齢者の方だけが対象ではなく、数十年後にそうした年代を迎える中高年層の方や働き盛りの方も含まれます。若い頃からの心掛けがあればその分、先々に訪れる上記のようなリスクも軽減することができ、QOL(生活の質)をより豊かに送り続けることも可能でしょう。そのために今、何をすべきかといったことは、治療の中でも機会があればお話させて頂きたいと思います。