スポーツとケガと安静

患者さんとのコミュニケーションの中で常に難しいなぁと思うことの1つに、「スポーツ選手への安静の勧め」というものがあります。

ケガをしたらまず冷やして安静、は基本中の基本です。

でも骨折や脱臼などの重傷でなく、ある程度痛みがあってもギリギリ動かせる捻挫などの場合、「最初は出来るだけ患部を動かさないで下さい」というお願いを守って頂けない事例はかなりの割合であるのです。特に中学・高校の部活などで毎日一生懸命に頑張っている練習を、極力休みたくないのはどの選手も共通の思いですよね。かつての学生時代の私自身も同じ思いでしたから、お気持ちは充分に分かります。

しかし治す側からすると選手の方々がどんな辛い時期でもギリギリまで頑張り過ぎてしまう状況、逆にとてもモッタイナイと思うのです。
キチンと最初から療養に専念すれば数日から数週間で完治する症状が、無理を重ねることで悪化や慢性化し、数ヶ月にも亘って痛みが取れないことも中にはあります。患部をかばいながら酷使しているので当然最高のパフォーマンスを発揮するという状況にも程遠く、結果が伴わない・・・という悪循環を繰り返してしまいます。

中にはご本人は痛くて治療に専念したくとも、部の指導者の方が休ませてくれずに無理をさせてしまうケースが見受けられたりすることもあります(これはとても困ります)。

どんなケガでも初期の処置で何をするかで回復の状況が8割方決まってしまいます。

そう、治すには最初がとても重要なのです。

最初の対応を誤ってしまうと簡単に治る痛みであっても回復までに複雑な道筋を辿ってしまうこともあるのが怖いのですね。ただし、こうした安静期の取り方はその選手の置かれた環境や時期ではアドバイスが異なります。大事な試合や引退試合を控えた状況であれば可能な限りガチガチにテーピングして送り出すこともありますし、どうしても完治するまで悠長に待てない場合でも見切り発車的にリハビリ時期や復帰を早めることもあります(積極的にお勧めはしませんが・・・)。

最大限、選手の皆さんのご要望を伺いつつ、早期の回復に向けた適切なアドバイスをさせて頂きたいと思っております。