投手の球数制限について
近年、野球のピッチャーが試合で登板する際の球数制限の必要性について、メディア等で議論が度々なされるようになってきています。
既にアメリカのメジャーリーグでは【1試合の登板で投げる球数は100球以内】とチームと選手間で決められているケースが殆どですし、《肩は使った分だけ消耗するもの》という考え方がスタンダードになっています。あのダルビッシュ選手はもう一歩踏み込んで、「投手のローテーション人数を6人に増やして登板間隔をもう少し空けた方が良いのではないか」という問題提起を投げかけています。今シーズンはダル選手も田中マー君も同じように故障に苦しめられてしまいましたからね。
一方で日本は…というとまだそこまでの見解には至っておらず、プロ・アマでの意思統一も出来ていません。昨年の日本シリーズでは当時の楽天・田中マー君が完投した翌日にまたリリーフ登板をしましたし、先日の軟式高校野球全国大会準決勝では、再々々試合の延長50回までもつれこんだ両校のエースがそのまま連日の連投だったりもしましたね。これらの事例から「果たしてこのままでいいのか?」という意見が出てくるのも自然なことと思います。
ただ、アメリカと日本、どちらの方法論が100%正しい&悪いという単純なものではありません。選手側からも、「練習だってたくさん投げるのだから試合での球数制限自体にはあまり意味がないし、何十球以内であれば安全…という明確な根拠はない。」とする意見、或いは、「野球選手の大半は高校3年間で一区切り。その中で全力を出し尽くすのだから大袈裟な球数制限など必要はない」という見方もあります。それも確かにごもっともですね。様々な考え方があり、導き出される答えも幾通りにもなるのでしょう。全ての選手にとってパーフェクトなシステムを作るのは不可能です。
ひとつ押さえておきたいのは、選手の驚異的な頑張りが時に美談として語られる一方で、体を正しく大切に使えばもっと大成できたであろう選手が無理を重ねた挙句に故障やケガに苦しみ、涙を飲んで選手生活を諦めなければならない事例というものがワンサとある…という事実です。スポーツ選手は子供から大人まで、与えられた環境の中でそれぞれに練習から試合まで全力を尽くすものです。しかしその環境や指導方法が時代にそぐわない根性論に左右されるものであったり、1人の選手にだけ過剰な負担を負わせるものであってはならないと私も思います。本来、一番大切なのは目先の結果ではなく、その選手1人1人の将来のはずでしょうから…。
球数制限というのは1つの問題提起に過ぎませんが、そうした議論が高まり、選手の皆さんにとってより安全なシステムの構築が今以上に出来ることを望むばかりです。
院長:本多