高齢者の「フレイル」対策
こんにちは。もう3月になってしまいましたねー。この「ひとりごと」、今年になって初めての更新になります。また数ヵ月サボってしまいました(汗)。
さて、あまり聞き慣れないかもしれませんが、「フレイル」という言葉をご存じでしょうか。これは近年の高齢者医療の分野で使われ始めているものです。フレイルとは、
「加齢と共に心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入、支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像」
と定義されています。もっと簡単な言葉にザックリ直すと、
「高齢になり心身の様々な機能が低下し、要介護の予備群になった状態(健全な状態と要介護状態の中間域)」
ということになるでしょうか(私なりにそう解釈しました)。
これまで使われてきた「ロコモティブ・シンドローム」とも繋がる言葉ではありますが、認知機能の衰えや、栄養状態の変化、気力などの精神的な変化といった部分も総合的に含まれるので、より高齢者の体調、体質変化の実情に沿った定義となっているようです。
この定義には5つの診断基準があり、3つが当てはまるとフレイル、1~2つが前段階のプレフレイルと呼ばれます。
1. 体重が減少する ⇒ 意図しない年間4.5kgまたは5%以上の体重減少
2. 歩行速度が低下する
3. 握力が低下する
4. 疲れやすくなる ⇒ 何をするにも面倒だと週に3-4日以上感じる
5. 身体活動量が低下する
こうした「フレイル」の状態に陥った人も、その最初の段階で適切な医療その他のサポートが介入することが出来れば、要介護状態を回避する(もしくはその可能性を幾分か軽減する)ことが出来るとされています。
そのサポートについて、身体的要因(筋力その他が衰えたりしてケガや病気をしやすくなる)に関しては、その時その時の状況における様々な医療機関での適切な治療もその一助になるでしょう。関節、筋肉など軟部組織の痛みの軽減は当院のような接骨院でももちろんお役に立てるものです。しかしフレイルへのサポートの対象となるのはこの部分だけには留まりません。その人に合わせた適切な運動は行なえているのか、適切な栄養摂取が保たれているのか・・・等に加え、
「その人が社会との繋がりを積極的に持っているか」
ということを周囲できちんと見守ってゆくことが出来るかが、とても重要なポイントとなってゆくのです。
様々な要因(大きな病気をする、バリバリ仕事をしていた方が定年でリタイヤする、あるいは伴侶の方に先立たれてしまう等)があり、そうした時期から周囲の人との関わり合いが薄くなり、家の外に出る機会や時間が極端に減ってしまうということはよく起こりえることです。こうした期間が長くなるほどに、筋力低下だけでなく「心の虚弱」状態に陥る可能性も高まってくるのですね。「心の虚弱」はいずれ必ず「身体の虚弱」へとまた繋がり、際限のない悪循環を作ってしまいます。ご自身の趣味、或いはボランティアや地域コミュニティへの参加などを通じて社会との関わりが持てるように、そうした意欲を保てるように周囲がさりげなくアドバイス出来る連携が作られてゆくことが望ましいのですが・・・。
このテーマを扱ったあるサイトの一文に、「筋力を維持してバランスのとれた栄養を摂取し、生きがいを忘れず、人と関わりあうことを止めない。たったそれだけのことがいかに難しいか。」と書かれてあり、まさにその通りだと思いました。このように「フレイル」という枠組みからは、高齢期の方々への健康増進対策がとても多面性であることが窺い知れます。医療や介護、その他の業種が一体となって円滑な対策が取れると良いとは思いますが、膨大する社会保障費の捻出も含め難題も山積みですね・・・。どうなってゆくのでしょうか。
院長:本多