高校野球選手の体を守るには
毎日暑い日々が続きますが皆さん如何お過ごしでしょうか。熱中症対策万全に、今しばらくの猛暑を乗り切ってゆきましょう。さて、甲子園での全国高校野球選手権大会が盛り上がっていますが、先日ネットニュースを見ておりましたら興味深い記事がありました。
≪高校野球で投球制限しても遅い-医師警鐘「指導者次第で子供の将来は変わる」≫
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170809-00010025-fullcount-base
https://full-count.jp/2017/08/09/post79165/
記事を要約すると
・ピッチャーの肩の酷使について近年では「登板過多では?」「投球数の制限をすべき」といった声がある。また高野連でも来年の大会以降に「タイブレーク制度」の導入を検討している。
・そうした議論の背景には投手の場合、登板過多による肩肘の故障で選手寿命を縮めてしまったり、野球を辞めた後でも日常生活に支障をきたす場合があるということ。
・これまで野球選手の故障治療や手術に長年携わってきた医師の話:「高校入学後の練習方法や投球過多にも問題があるが、それ以前の小中学生時代より無理して過剰に投げ続けてきた結果として高校で大きな故障を起こしてしまう。なので少年野球の頃から対策を取らないと根本の解決に繋がらない。」
・小中学生に多い肘障害の代表格が(1)上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(OCD)(2)内側上顆下端裂離骨折(リトルリーグ肘)。いずれの障害も悪化すれば手術を必要とし、最悪の場合は高校入学以前に野球を諦めなければならず、日常生活に支障をきたすこともある。
・どちらの障害も成長期に負担が掛かりすぎる使い方で生じるもの。避けられる障害でもあるので、子供が発する痛みのサインを指導者や両親が気付いてあげるべき。
・子供の身体の成長に合わせた練習メニューを考えることが大切。小学生のうちは野球以外のいろいろなスポーツの動きを取り入れることでケガの少ない体作りをすることが出来る。
といったものです。とても良い内容でした。
野球に限らず他のスポーツでも練習過多による故障が問題になることは今も昔もありますが、特に野球に関しては競技を始める年齢の早さ(競技年数の長さ)、練習の過酷さ(過密さ)、そして莫大な競技人口に比例する発症例の多さなどからこうした故障の問題が度々クローズアップされるように思えます。
一昔前のように根性論、精神論だけが幅を利かせて無茶をさせることはさすがに近年は少なくなりつつあるかと思いますが、それでも「昔から行われてきた伝統的な練習だから」という理由だけで深い考察なく続けられている練習方式もまだまだあろうかと思います。これについての一例では、あのダルビッシュ投手も以前から盛んに「過剰な走り込み練習は必ずしも野球のパフォーマンス向上に繋がらない」という旨の意見をSNSで発信し続けています。
(私自身はそのダルビッシュ選手の意見の是非については正直まだ何とも言えず・・・ですが)
指導者の方々に体の故障や障害についての理解をもっと深めて欲しいというこの記事内容は大いに頷けるものです。野球が大好きで、試合に出て勝ちたいと思っている大半の球児たちは、体力の限界や体の変化といった部分以上に無理を重ねて頑張ってしまうものなのです。その気持ちを酌みつつ、選手の変化を察知して練習方法を変えたりストップを掛けてあげらるのは指導者の方々しかいないのですから(治療する側から個々の選手に対して万全のサポートがあったとしても、練習に関しての決定権はもちろん、現場にしかありません)。
現在は以前に比べて格段にトレーニング理論も確立され、各競技においてパフォーマンス向上、そして選手寿命を伸ばす取り組みがなされています。時代に即した練習方法、そして成長期で繊細な体の子たちを長い目で見守ることで、志半ばで競技生活を諦めなければならない選手がもっと減ってゆくことを願うばかりです。最後に、ピッチャーの「球数制限」導入と延長タイブレーク方式へのルール変更は個人的には大賛成です。
院長:本多