VOL.2 足関節周辺のスポーツ外傷・障害
スポーツ時に足関節周辺で発生しやすい痛みについて簡単にまとめてみました。
障害部位によって処置の方法もいろいろですが、基本的にはどの症状も痛みが出てから最初に行うのはRICE処置(Vol.1参照)と安静保持です。スポーツ活動は原則、激しい痛みをこらえてまでやるべきではありません。痛みが落ち着いてから徐々に動かし、機能回復のリハビリを行ないます。
また、繰り返し障害を起こしてしまう場合や回復が遅い人は、フォーム修正、周辺筋群の筋力・柔軟性強化、栄養摂取方法(量・バランス)の見直しなどを行なうことも必要です。
● 足関節捻挫 ● アキレス腱炎、アキレス腱周囲炎 ● シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎) ● 下腿部、中足部の疲労骨折 ● 足底筋膜炎 ● 有痛性外脛骨 ● 衝突性外骨腫(FOOTBALLAR'S ANKLE) ● 踵骨後部滑液包炎 |
足関節捻挫
最も多いスポーツ外傷のひとつです。中でも足首を内側方向にひねった際に、外側の靱帯(前距腓靱帯、踵腓靱帯、後距腓靱帯など)を痛める “内反捻挫” が大半を占めます。
それ以外では逆に内側の靱帯(三角靱帯)に起こる“外反捻挫”、くるぶしの骨同士の間の靱帯(前脛腓靱帯)の捻挫、など様々な箇所の損傷があります。また受傷の際に捻転力が強すぎる場合、剥離骨折を伴うこともあります。
軽めの捻挫であっても放置せず受傷直後にRICE処置を行い、しばらく安静を保ちます。固定方法は短い圧迫包帯から、副子を使用した固定法まで状況に応じて様々です(湿布だけしておしまい・・はくれぐれも避けましょう!)。その後は定められたリハビリメニューに沿って治療を進めていきます。特にサッカーや陸上など走ることの多い競技の選手は復帰には細心の注意が必要です。
赤い部分…前距腓靱帯 黒い部分…踵腓靱帯 青い部分…後距腓靱帯 (右足関節の外側) |
非伸縮のホワイトテーピングでの固定 (右足関節) |
それぞれ少し長めになっていますが大まかな位置です |
スポーツ時に再発予防の目的で使用します |
アキレス腱炎、アキレス腱周囲炎
アキレス腱への外力が繰り返されたときに生じやすい症状です。アキレス腱やその周辺部に圧痛や自発痛、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋)を伸ばしたときの痛みなどがあり、腫れてくることもあります。強い痛みがなかなか引かない場合、アキレス腱 部分断列を伴っている場合もあるので注意が必要です。
伸縮テーピングを使用する場合は踵~ふくらはぎまでを覆うように貼り、筋・腱を保護します。運動前は十分なストレッチとウォームアップ、運動後はアイシングも必要です。痛みの強い場合は運動を中止し、安静保護のため包帯固定します。
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キネシオテープでのアキレス腱へのテーピング |
シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)
スネの骨(脛骨)の中・下1/3の内側部分の骨を覆う膜(骨膜)が、繰り返し周辺の筋肉(ヒラメ筋、後脛骨筋)に引っ張られ、炎症を起こしてきます。
新しい(まだ硬い)シューズで舗装路などを長くランニングするとなりやすいと言われています。また、過回内足(オーバープロネーション)といって下腿の軸と踵の軸の角度がズレてしまう形状を足首に持っていると、ヒラメ筋が緊張しすぎて症状を起こしてくることがあります。
運動前は筋肉の緊張を解くためにストレッチを十分に行います。運動は痛みのでない範囲にとどめておき、終わった後は充分にアイシングを行います。伸縮テーピングで保護する場合は、下腿の筋肉(ヒラメ筋、後脛骨筋など)を覆います。シューズは衝撃吸収力の高い物を履き、場合によっては部分的なインソール(靴敷き)を入れ、足首のアライメント(角度・軸)を調整します。
赤い部分がシンスプリントの起きやすい部位です |
伸縮テーピングの一例 |
下腿部、中足部の疲労骨折
疲労骨折は通常の骨折と違い、集中的にトレーニングをした際などに同じ部位に繰り返し強い力が加わり、骨にストレスがかけられ続けた結果起こる病的な骨折です。
中学・高校生くらいの年代に多く、スネの骨(脛骨・腓骨)、足の甲の骨(中足骨)に起こりやすい特徴があります。圧痛と各運動痛が主症状となり、ジャンプからの着地やランニングなどで痛みが強くなります。
疲労骨折の診断を受けた場合は運動は中止し、数週間から1~2ヶ月の間、包帯固定などで安静を保ちます。スポーツに復帰する際も足への荷重が偏らない様、練習内容を考えたり周辺の筋肉の強化なども必要になります。
足底筋膜炎
足の“土踏まず”の部分の筋膜が走ることの多い競技やジャンプの多い競技、足を踏ん張ることの多い競技などで使いすぎによる炎症を起こしていく症状です。特に荷重時の足底の痛み及び圧痛がみられます。
扁平足やハイアーチ(扁平足とは逆にアーチの角度が高い形状)の人、下腿部の筋・腱の柔軟性が低下した人などに起こりやすく、合わないシューズを履き続けたり硬い床・路面などでの運動のし過ぎなども原因となります。
テーピングは伸縮テープか非伸縮のホワイトテープにて足底の筋・腱に沿って貼ります。
シューズは足に合う物を選び、扁平足の場合はアーチサポートという足底板を使用するのも効果的です。運動前のストレッチ、運動後のアイシングは十分に行います。
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足底へのテーピング処置の一例 |
有痛性外脛骨
足の内くるぶしのやや前側に舟状骨という骨があり、人によってその外側に外脛骨と呼ばれる小さな余計な骨が存在することがあります。この場合にそこを通過する後脛骨筋の繰り返しの引っ張りの力や靴の当たり方などにより、外脛骨と舟状骨の間に炎症が起きて痛みが生じます。これが進行すると骨が膨らんだような盛り上がりが生じ、余計に当たってさらに痛みが強くなります。
包帯で固定する場合などは、薄いパッドを中に入れるのも効果的です。運動前の軽いマッサージ、運動後のアイシング、アーチサポートなどのインソールの着用、柔らかいシューズの着用なども必要であれば行います。痛みの強い場合は運動量を調整します。
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有痛性外脛骨の発生部位 (赤い部分) |
衝突性外骨腫(FOOTBALLAR'S ANKLE)
足関節の捻挫と同時に骨と骨同士が衝突し、骨や軟骨に損傷が発生する場合があります。このときの体の修復機転として損傷した部位が“骨棘”と呼ばれる変形を作ってしまい、足の動き(特に背屈など)で強い痛みが生じてきます。
運動をする場合は非伸縮のホワイトテープで固定し、痛みの出る方向への動きを制限します。強い痛みが続く場合は運動は中止し、場合によっては骨棘の摘出手術をしなければならないこともあります。
踵骨後部滑液包炎
滑液包とは皮膚と骨や腱の部分の間にある袋状の軟部組織で、わずかに液体が含まれています。本来滑液包の役割は皮膚と骨や腱などが直接こすれ合うことを防止することですが、一定の動きにより摩擦が長期間続くと炎症を起こしていきます。
かかとの後ろの部分の滑液包が炎症を起こすと腫れて硬く盛り上がり、強く痛むようになります。足底筋膜炎と同様、扁平足やハイアーチの人がなりやすいと言われています。又、長距離走のランナーなどにもよく起こりうる症状です。
治療はまず患部がシューズに当たらないよう、パッドや包帯などで保護することが大事です(“靴ずれ”を予防するのと同じです)。運動量の調整や、運動後に行うアイシングなどは他の症例と同様です。